生理痛について
生理痛とは、生理前から生理中にかけて、下腹部や腰に起こる痛みです。これに加え、頭痛や胃痛、吐き気、めまい、下痢などの症状が同時に現れることもあります。
生理痛の主な原因は、子宮内膜から放出されるプロスタグランジンによって引き起こされる子宮の収縮です。
生理痛の辛い症状について
下腹部の痛み
生理が始まる直前から、子宮を収縮させるプロスタグランジンという物質が分泌されることが原因です。
このプロスタグランジンは、痛みや炎症などを引き起こす原因にもなります。この結果、下腹部が痛くなります。
頭痛
エストロゲンの分泌量によって頭痛が生じることがあります。生理前にエストロゲンの分泌が減少すると、それに伴って血管収縮作用のあるセロトニンも減ります。セロトニンの減少によって、脳内の血管が広がり、頭痛が発生します。生理時の頭痛は、通常の片頭痛よりも持続時間が長く、痛みも強く現れやすいです。
貧血
生理中のめまいや立ちくらみは、貧血の症状のことがあります。月経量が多い場合は、鉄欠乏性貧血を発症しているケースが多いです。
吐き気
プロスタグランジンの分泌過多によって吐き気も引き起こされます。プロスタグランジンは胃や腸の平滑筋を収縮させる性質があるため、胃部への不快感が生じ、それが吐き気として現れることがあります。
気分の落ち込み・イライラ
生理前や生理中の気分の落ち込み・イライラは、女性ホルモンの変動によって起こります。
生理痛の痛みは
どれくらいなの？
月経困難症とは生理痛が重くなった状態です。生理痛の感じ方は患者様一人ひとり異なりますが、ご自身の生理痛の重さを知りたい場合には、「月経困難症スコア」を活用しましょう。このスコアは、日常生活への影響や痛み止めの使用頻度などを評価することで、生理痛の程度を把握する手助けとなります。
月経困難症の診断スコア
下記のいずれかで3点以上該当する場合、婦人科を受診することをお勧めします。
日常生活に対する影響
| 0 | なし |
|---|---|
| 1 | 軽度（仕事や学業、家事にやや影響がある） |
| 2 | 中等度 （横になって一休みする必要があるほど仕事や学業、家事に影響を及ぼしている） |
| 3 | 重度 （1日以上寝込み、仕事や学業、家事に悪影響を及ぼしている） |
鎮痛剤の使用頻度
| 0 | なし |
|---|---|
| 1 | 軽度（最近の生理期間内に鎮痛剤を1日使用） |
| 2 | 中等度（最近の生理期間内に鎮痛剤を2日使用） |
| 3 | 重度（最近の生理期間内に鎮痛剤を3日以上使用） |
月経困難症
（生理痛が重くなる）の原因
月経困難症には2つのタイプがあり、器質性月経困難症と機能性月経困難症に分けられます。
器質性月経困難症：
婦人科疾患によって引き起こされる月経困難症
器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患が引き金となっています。主に30歳以上の女性によくあり、生理が始まる前の4～5日間に痛みが発生します。痛みは生理が終わるまで継続します。
機能性月経困難症：
プロスタグランジンの
過剰によって起こる月経困難症
機能性月経困難症は、生理痛の原因となる特定の疾患が見られない月経困難症です。思春期～２０代前半の女性に頻繁にみられます。プロスタグランジンの過剰分泌によって子宮の過度な収縮が引き起こされることで発症します。また、成長段階で子宮頚管が狭いことも原因の1つとなり、経血を少量しか排出できず、過剰な子宮の収縮によって激しい痛みが生じます。機能性月経困難症の場合、月経開始後1～2日目に痛みがピークに達します。
生理痛(月経困難症)の治療
薬物療法(鎮痛薬）
非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）を服用することで、生理痛の原因となるプロスタグランジンの作用が抑制されます。
症状がひどくなる前に早めに服用するのが望ましいです。
低用量ピルや超低用量ピルを服用することで、経血量を減らしながら子宮収縮を抑制する方法があります。ホルモン療法
ディナゲストなどの黄体ホルモン製剤を服用することで、排卵や子宮内膜の増殖を抑制し、生理痛を緩和できます。
低容量ピルが適さない場合でも利用できます。
子宮内避妊具(ミレーナ)
ミレーナと呼ばれる子宮内避妊具を使用すると、子宮内膜の過剰な増殖を防ぎ、月経困難症や過多月経の改善に期待できます。ミレーナとは黄体ホルモンを分泌し続けることで、高い避妊効果が最長5年間も得られる子宮内避妊具です。
漢方療法
漢方療法も生理痛の緩和に有効です。体質や症状に考慮しながら漢方薬を処方します。
生理痛に
個人差があるのは何故？
生理痛が軽度の方は、通常通りの生活が可能ですが、重い痛みを抱える方は、寝込むことがしばしばあり、日常生活を送ることが難しい場合も決して珍しくありません。
生理痛の重さには個人差がありますがこれには理由があり、生理痛の強い方が過度に苦しんでいるわけではありません。
痛みを引き起こす物質の
分泌量に個人差がある
痛みを引き起こすプロスタグランジンの分泌量には個人差があり、そのため生理痛が重い方と軽い方がいます。
プロスタグランジンが多く分泌されると、子宮の収縮が強まり、痛みが増大します。また、痛みの感じ方も個人個人で異なります。
体調やストレスによって痛みが強くなることも
体調やストレスによって生理痛の度合いが変化する場合もあります。普段は痛みを感じない方でも、体調不良と生理が重なると痛みが増すことがあります。
もし「今月の生理が通常より辛い」と感じた際は、体調の影響を受けている可能性があります。
さらに、ストレスも生理痛を悪化させる原因となります。生理痛に体調やストレスが影響するため、できる限り無理をせず、体調を整えておくことが非常に重要です。