ミレーナ
(子宮内黄体ホルモン放出システム)とは
ミレーナ(Mirena)は、約3cmほどのT字型の小さな器具です。
ミレーナを子宮内に挿入し、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を継続的に子宮内に放出することで、子宮の内膜の増殖を抑え、内膜が薄い状態になります。
そのため、月経に関する症状の改善や避妊効果が期待できる治療法です。効果は約5年間持続します。
ミレーナは、月経困難症や月経過多の改善が期待できるため、2014年以降、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などに伴う月経困難症や多量月経の治療として保険適用が認められるようになりました。
ミレーナの主な効果
1.月経困難症・過多月経の改善(保険診療)
- 月経痛が改善したり、出血量を減少させます
- 3〜6ヶ月ほどで徐々に月経が軽くなり、月経が来なくなる方もいます
ミレーナは子宮内膜を薄く保つ効果があり、月経時の出血量や生理痛を和らげるのに有効です。
2. 高い避妊効果(自費診療)
- ピルと同等以上の避妊率(1年間に妊娠する確率は約500人に1人(0.2%)です)
使用後1年以内に妊娠する確率は、コンドームが2%、低用量ピルが0.3%に対して、ミレーナは最も低い0.2%と報告されています。
- 1度挿入すれば、ピル等の日々の服用などは不要なので、飲み忘れ等の心配は不要です
ミレーナから分泌される成分であるレボノルゲストレルは、子宮内膜を薄くするだけでなく、子宮の入り口の粘液の精子の通過を難しくします。そのため、受精卵の着床や精子の侵入を効果的に防ぐことが可能です。
ミレーナをお勧めする方・
副作用について
こんな方におすすめです
- ピルの服用ができない方、忘れてしまいやすい方
- 月経量が多く、日常生活に支障をきたしている方
- 月経困難症の緩和を希望される方(挿入可能な場合)
- 妊娠を今は希望されていない方で、避妊を希望される方
副作用
ミレーナによる副作用として、経血が出る日数の延長、不正出血、月経周期の変化、腹痛、卵巣のう胞(一時的なものがほとんど)などがあります。
装着後の数日~3週間ほどは、軽度の出血や腹痛、腰痛、おりものの増加などの症状が出やすくなります。これらの症状は時間とともに治まるため、あまり心配しなくても問題ございません。また、装着後3~6ヶ月の間に、月経時期以外の出血(少量)が起こるのも珍しくありません。
重篤な副作用としては、骨盤炎症性疾患、異所性妊娠(子宮外妊娠)、子宮穿孔(ミレーナが子宮壁に入り込んでしまう)などが挙げられます。高熱、下腹部痛、出血などが見られた場合は、迷わずにお問い合わせください。
ミレーナ挿入後に出た症状についてお悩みの際は、放置せずに当院までご相談ください。
ミレーナをご使用中の出血について
ミレーナを装着後、最初の数か月間は月経以外の時期に出血(不正出血)が見られることがしばしばあります。これは多くの方に起こる一般的な反応で、時間の経過とともに落ち着くことがほとんどですので、ご安心ください。
また、黄体ホルモンの作用によって子宮内膜がうすくなるため、装着後、徐々に月経の回数が減ったり、出血自体がなくなることがあります。実際に、約20%の方では月経がまったく来なくなると報告されています。
ミレーナ装着中に月経がこなくなっても、それだけで妊娠や閉経を意味するわけではありません。ただし、以下のような場合には、念のため早めにご受診ください。
📌 受診をおすすめするケース
- 定期的な月経があったのに、前回の月経から6週間以上経っても月経がこないとき
- 吐き気・嘔吐・食欲不振など、妊娠を思わせる症状があるとき
ミレーナの適応が難しい場合は?
以下に当てはまる場合、ミレーナの装着が難しくなります。
- ミレーナの成分が体に適合しない
- 妊娠中であるかもしれない、または既に妊娠している
- 大きな子宮筋腫や子宮形態異常がある
ミレーナとピルは
どっちがいい?
違いについて
ミレーナもピルも避妊の手段として有効です。
ただし、避妊の効果においては、一般的にミレーナの方がピルよりも高いとされています。
ミレーナ
- 子宮にのみ影響を与える
- 卵巣の機能を保ちながら排卵も行う
- 喫煙や他の服薬に左右されず使用できる
- 一回挿入しただけで約5年間の避妊効果が維持できる
- 副作用が比較的少ない
ピル
- 全身に影響を及ぼす
- 排卵が停止する
- 喫煙や服薬の影響で使用できない場合がある
- 毎日服用しなければならない
- 血栓症のリスクが伴う
ミレーナ挿入の流れ
1診察
性感染症(淋菌、クラミジア)の検査、子宮頸がん検診、超音波検査などを実施します。(所見上必要な場合は、子宮体がん検診を行います。)
2週間後に結果が揃いますので、2週間後以降の月経5〜7日目に受診していただきます。
2施術
結果に異常がなければ、ミレーナ挿入可能となります。内診台でミレーナを挿入します。
3定期的な検診
定期検診は挿入から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、そして1年後に予定しています。1年経過後には、年に1度の検診へと変わります。
💬 挿入方法と通院について
- 月経5〜7日目に挿入します。処置は順調に装着ができれば5分〜10分程度で終了します
- 挿入後は定期的なチェックのために通院が必要です(1,3,6,12ヶ月後、その後1年毎)
- ※ご出産経験がない方や帝王切開後の方でも挿入は可能ですが、前処置が必要な場合や、挿入が困難な場合があります。
- 万が一、挿入ができなかった場合や挿入後に脱出してしまった場合でも、費用はかかります。大変申し訳ありませんが、ご了承ください。
保険適用される?
ミレーナの費用について
過多月経や月経困難症の場合には保険が適用されます。避妊を目的とする場合は、保険の対象外となります。
項目 | 費用 |
---|---|
保険適用の場合 | 約10,000円(3割負担の場合、非課税、診察料別途) |
自費の場合 |
66,000円(税込、診察料込) |
- この他、挿入前診察時に検査代がかかります
- 内容によりますが、保険適用の場合は約4000円+初診/再診料、自費の場合は11,000円(税込、診察料込)となります。
- 子宮体がん検診が必要になった場合は、別途費用がかかります。
子宮内避妊具(ミレーナ)の
よくある質問
ミレーナを使用しても月経は来るのでしょうか?
来る方が多いです。但し、ミレーナは定期的に黄体ホルモン剤を放出するため、子宮内膜が薄くなり、月経量が徐々に減ったり、月経自体が来なくなることがあります。ミレーナ装着者の約20%が無月経となります。