多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）

通常の生理周期では、数十個の卵胞が発育し始めますが、１回の周期で排卵されるのは大きくなった卵胞1つのみです。
ただし、多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）は、どの卵胞も育ちきらず、複数の小さな卵胞（嚢胞）が卵巣内に残る疾患です。この症状は、20歳から45歳の女性の5〜8%で見られます。

現在のところ、多嚢胞性卵巣症候群の原因ははっきりとしていません。脳下垂体から分泌されるホルモンと、卵巣から分泌される女性ホルモンのバランスが乱れることによる排卵障害、遺伝的素因、環境、肥満などの要因が複雑に絡み合うことで引き起こされるとされています。また、男性ホルモンの分泌を制御する酵素の機能不全に関する多くの報告もあり、男性ホルモン（アンドロゲン）の分泌量が増加することがこの疾患の原因とも考えられます。

さらに、男性ホルモンの血中濃度が持続的に高い場合、糖尿病（インスリン作用に対する抵抗性）、心疾患や血管疾患（動脈硬化や冠動脈疾患など）、高血圧などのリスクが上昇することがあります。また、排卵が困難なため、プロゲステロンが分泌されず、この状態が持続すると子宮内膜が異常に厚くなります（子宮内膜増殖症）。さらに、子宮内膜がんのリスクも高まる恐れもあります。

多嚢胞性卵巣症候群の場合、今すぐの妊娠を希望するかなどのライフプランも治療を決めるうえで重要になってまいります。
BMIが25以上の方々は、減量によるダイエットだけでも症状や排卵率が改善する可能性があります。