性感染症とその感染経路
性感染症(STI)は、性行為やそれに類する行為によって感染する病気のことです。
多くは「性器・喉・肛門」などの粘膜や体液を介して感染します。
自覚症状がないまま感染しているケースも多く、知らないうちにパートナーへうつしてしまうこともあります。
早期の検査・治療がとても大切です。
性感染症の症状チェック
女性の場合
おりものの症状
- おりものの量が増えており、
下腹部痛がある - 緑色で臭いのきついおりものが出る
デリケートゾーンの症状
- デリケートゾーンが痛い、かゆい
- 排尿時に強い痛みが出る
- 太ももの付け根付近にあるリンパ節が
腫れている - デリケートゾーンに
痛みのないイボが発生した - デリケートゾーンに強い痛みがあり、
できものがある
全身の症状
- デリケートゾーン以外にも痛みを伴わないしこりや腫れができた
- 全身に赤茶色のバラ状の発疹が発生した
- 喉が痛む・腫れている、咳や発熱も同時に起こっている
- 黄疸、吐き気、食欲不振、全身がだるい、発熱などの症状が長期間続いている
性感染症(性病)の種類
クラミジア感染症
「クラミジア・トラコマティス」という細菌が原因で発症する感染症で、日本において最も多く報告されている性感染症です。
男女問わず多くの場合、自覚症状がないため、感染していることに自覚できないまま進行することが多いです。その結果、卵管炎により卵管の癒着や閉塞が起き、妊娠が難しくなる原因になったり、骨盤内炎症(PID)を引き起こし急性腹症(強い腹痛)の原因になることがあります。できるだけ早く感染を見つけ、症状を引き起こす前に治療することが何より大切といえます。妊娠中の感染は、出産時の産道感染による新生児感染を予防するため、分娩前に治療が推奨されています。
淋菌との同時感染も多く、クラミジア感染が見つかった場合は必ず淋菌の検査をすることをおすすめします。
淋菌感染症
淋菌感染症は、淋菌に感染することで発症する性感染症です。男性の場合、排尿時に強い痛みを感じることがありますが、女性の場合、半分の方が自覚症状を伴いません。そのままにしているとクラミジア同様、卵管炎により卵管の癒着や閉塞が起き、妊娠が難しくなる原因になったり、骨盤内炎症(PID)を引き起こし急性腹症(強い腹痛)の原因になることがあります。できるだけ早く感染を見つけ、症状を引き起こす前に治療することが何より大切といえます。クラミジアとの同時感染も多く、淋菌感染が見つかった場合は必ずクラミジアの検査をすることをおすすめします。
マイコプラズマ・
ジェニタリウム
マイコプラズマ・ジェニタリウムは、一昔前から欧米で性感染症として検査・治療が進められてきましたが、日本では近年になって性感染症として認識され始めました。令和4年からマイコプラズマ/トリコモナス検査が保険でできるようになり、一般的にも徐々に知られるようになっています。
女性の場合、クラミジアと同様にほとんど症状がないことが多いです。しかし、膣やおりものの違和感(子宮頸管炎)をきっかけに発見されるケースもあります。一方、男性では排尿時の違和感、排尿痛、尿道分泌物などの尿道炎症状が現れます。
外陰ヘルペス
性器にヘルペスウイルスが感染することで起こるものです。初めて感染した時には多くの場合、無症状ですが性器や口周辺に痛みを伴ったできものができることがあります。潰瘍といって、口内炎のように表皮がえぐれたようなできものができ、非常に痛みます。これにより、激痛で排尿や歩行に悪影響を及ぼすこともあります。一度でも感染すると、ヘルペスウイルスは体内から完全に排出されず、神経に隠れます。そのため、体調不良になったタイミングなどに再発する恐れがあります。
尖圭コンジローマ
尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症のひとつで、HPV6,11型の感染によるものです。女性の場合、デリケートゾーンにイボが発生することがあります。これらのイボに気付かなかったり、膣の中にイボが発生したりした場合、痛みやかゆみなどの症状がほとんど伴わず、感染に気付かないこともあります。自然に治癒することもありますが、治っても再発しやすい傾向があります。
トリコモナス腟炎
トリコモナス感染症は、トリコモナス原虫という寄生虫が性器内に寄生することで発症する感染症です。性行為によって感染することが一般的ですが、下着、タオル、便座、浴槽などからも感染する危険性が知られています。男性は症状が現れにくいですが、女性はおりものの増加や悪臭などの症状が見られることがあります。
梅毒
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染することで発症する病気です。感染すると、デリケートゾーンにしこりが発生したり、鼠径部(足の付け根)のリンパ節が腫れたりします。また、時間が経過すると全身に湿疹が現れますが、しばらく経過すると症状が消えるため、「治った」と誤解されやすく、発見が遅れるケースもあります。適切な治療を受けないと進行し、重篤な合併症へ進展する危険を伴います。
さらに、妊娠中の女性が梅毒に感染すると、胎盤を介して赤ちゃんにも感染します(先天梅毒)。流産や死産を引き起こしたり、赤ちゃんが難聴や知的障害を抱えたりすることもあります。
HIV/エイズ
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した後は、無治療ですと数ヶ月~10年のうちにエイズを発症することがあります。エイズを発症すると免疫力が落ちてしまい、通常であれば影響を及ぼさない無害なウイルスや細菌でも、感染・重症化しやすくなります。現在は医療技術の進歩により、薬物療法を続けることで今まで通りの生活を維持することが可能になりました。早期発見が何より大切です。
B型肝炎(HBV)
B型肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気です。HBV に感染すると肝臓の細胞内でウイルスが増えて、肝細胞が壊れ、肝臓の働きが悪くなることで肝炎が起こります。成人の感染の場合、潜伏期を経て全身倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が現れ、引き続き黄疸が出現します。
ご出産時に母親のウイルス量が多い場合、血液を介して赤ちゃんに感染します(母子感染可能性は 90%程度)。
HBV は、HBV に感染している人の血液が体内に入ることで感染します。
例えば、性行為・母子感染・感染している人の血液の輸血、注射針、入れ墨針の使い回し(アートメイク、ピアスの穴をあけなど)、家族内感染などです。
C型肝炎(HCV)
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus:HCV)の感染によって起こる肝臓の病気です。
HCV に感染すると、潜伏期を経て全身倦怠感、食欲不振、吐き気などの症状が現れ、黄疸が出現することもある。自覚症状がないまま経過することもあります。HCV に初めて感染した人の約 70%は、ウイルスが身体の中から排除されません。病気がかなり進行するまで症状が出ないことがあるため、気が付かないうちに慢性肝炎となることがあります。
ご出産時に母親が HCV に感染していると、出産のときに血液を介して赤ちゃんに感染することがあります。(母子感染:可能性は 5~10%程度。)
HCVは、HCV に感染している人の血液が体内に入ることで感染します。
例えば、感染している人の血液の輸血、注射針、入れ墨針の使い回し(アートメイク、ピアスの穴をあけなど)などです。
性感染症検査
(性病検査)の方法
クラミジア、淋菌の検査
膣分泌物を検査します。喉の感染が疑われる場合はうがい液を採取して検査を実施します結果まで約2週間かかります。
マイコプラズマ・ジェニタリウム、トリコモナス膣炎の検査
膣分泌物を採取し、検査を実施します。結果まで約2週間かかります。
症状がある場合、マイコプラズマ及びトリコモナスの検査であれば保険適用で検査ができますが、ウレアプラズマ等も同時に検査をご希望の場合は自費の検査になりますのでご了承ください。
梅毒、HIV/エイズ感染症の検査
血液検査が必要です。HIV感染症の場合、スクリーニング検査の後に確認検査が実施されます。
外陰ヘルペス・
尖圭コンジローマの検査
外陰ヘルペス、尖圭コンジローマは、ほとんどの場合では視診を行います。
性感染症の治療について
いずれの疾患も、症状がある方だけでなく、パートナーと共に検査・治療をすることが大切です。
ピンポン感染といって、パートナー間で性感染症の原因病原体を交互にうつし合い、感染が繰り返される状態になってしまっては、せっかく行った治療が台無しになってしまいます。検査〜治療効果判定陰性が確認できるまでは、感染をおこすような行為は控えるようお願いいたします。
クラミジア
内服の抗生物質を処方します。2-3週間後に効果判定のために再度検査を行います。陰性であれば治療終了です。
淋病
抗生物質を点滴で投与します。2-3週間後に効果判定のために再度検査を行います。陰性であれば治療終了です。
マイコプラズマ・
ジェニタリウム
内服の抗生物質を処方します。2-3週間後に効果判定のために再度検査を行います。陰性であれば治療終了です。
梅毒
内服の抗生物質を処方します。治療後3,6,12ヶ月に効果判定のために再度検査を行います。
外陰ヘルペス
抗ウイルス剤を飲み薬または軟膏で使用します。初発型は症状が強く出ることがあるので、内服薬で治療を行います。治療経過を見ながら、必要であれば抗ウイルス薬の内服期間を延長します。
尖圭コンジローマ
軟膏であるべセルナを処方します。電気メスによる焼灼や液体窒素による凍結療法などを選択することもあります。大変申し訳ありませんが、焼灼や凍結療法は当院では行えません。
HIV/エイズ
専門医療機関へのご紹介後、抗ウイルス剤の内服によって治療します。
トリコモナス膣炎
膣洗浄を行い、抗菌剤を膣内に投与または内服していただきます。
性感染症検査
(性病検査)の費用
おりものの異常などといった症状がある場合は、保険適用の検査も可能です。
検査項目 | 費用 (税込、診察料込み) |
---|---|
STDスタートチェック (クラミジア+淋菌) | 7,700円 |
STDしっかりチェック (スタートチェック+HIV、梅毒) | 14,300円 |
STDフルスクリーニング (しっかりチェック+B型肝炎+C型肝炎) | 18,700円 |
オプション:マイコプラズマ・ウレアプラズマ | 12,100円 |
オプション:咽頭クラミジア・淋菌 | 9,900円 |
性感染症(性病)は
自然に治らない?
早めの相談を
性感染症は、通常自然治癒しません。そのままにすると症状が一時的に消えることもあり、「治った」と勘違いされることもあります。
適切な治療を受けないと病原体が残り、パートナーにもうつったり、症状が進行し重症化したりする危険を伴います。パートナーが性感染症に感染している場合や、不安な症状が出た場合、当院へご相談ください。