当院では、HPVワクチンやRSワクチン、MRワクチンをはじめとして、様々なワクチンを取り扱っております。今後さらに充実させてまいります。
全国的にMR(麻疹・風疹)ワクチンの供給が不安定な状況が続いておりましたが、当院ではこのたび、院内にワクチンの在庫を確保することができました。接種をご希望の方は、お早めにご予約ください。
ワクチン接種をご希望の方、またはご不安がある方は、お気軽に当院までお問い合せください。
Menu
HPVワクチン
子宮頸がんについて
子宮頸がんは性経験のある方でしたら、どのご年代でも発症するリスクのある病気です。
子宮頸がんは20代から増えはじめて、最も多く見られる発症時期は30代後半〜40代です。
日本では、毎年1万人の人がかかり、毎年約3000人の人が亡くなっています。一生のうち、70人に1人は子宮頸がんになるといわれています。
そして、30代までにがんの治療で子宮を失ってしまう人も1年間に約1000人います。日本では、現在、25〜40歳の女性の死亡原因の第2位が子宮頸がんです。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんの原因
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって引き起こされると考えられています。HPVは、主に性交渉によってうつりますが、感染してもほとんどは自然に消えます。ただし、高リスクのHPVが持続感染した場合、その一部が徐々にがん化していきます。
性行為の経験がある女性の約50~80%が、HPVに感染する可能性があり、女性の多くが一生に一度は感染するといわれています。
残念ながら、HPVに感染した場合に有効な治療薬は見つかっていません。だからこそ、予防が何より大事なのです。
子宮頸がんワクチンとは
子宮頸がんワクチンを受けると子宮頸がんのリスクが軽減できます。当院で取り扱っているHPVワクチン「シルガード9」は、現在公費で受けられるワクチンの中で最も多くの種類(9種類)のHPVを防ぐことができます。
子宮頸がんの原因の80〜90%を占める7種類のHPV(16,18,31,33,45,52,58型)を予防することができます。ワクチンの効果維持期間は現在も引き続き調査されていますが、少なくとも12年は抗体が維持される可能性が示されています。
大切なことは、HPVに感染する前にワクチンを接種することです。つまり、性経験前に接種を受けるのが望ましいということで、公費では小学校6年〜高校1年の方に接種を勧めています。
注意すべきことは、HPVワクチンはHPVの予防効果はありますが治療効果はありません。つまり、今現在感染している場合、その治療にはならないということです。
すでに性経験がある方でも、もちろん接種することはできますし、今後の感染リスクを防ぐ効果は期待できます。
子宮頸がんワクチンは
何歳に接種すべきか
子宮頸がんワクチンは小学校6年生~高校1年生の間に接種するのが望ましく、この時期に公費負担で受けていただくことができます。(標準的な接種時期は中学1年生です。)
ただ、15~45歳の全ての女性に子宮頸がんワクチン接種が有効とされているため、公費範囲年齢以外の方も、自費にはなってしまいますがぜひご検討ください。
子宮頸がんワクチンのタイプとそれぞれの効果
子宮頸がんワクチンは3種類あり、「サーバリックス」「ガーダシル」「シルガード9」が存在しています。どのHPVを防ぐのかについてはワクチンによって異なります。
当院では、シルガード9を取り扱っております。初回接種の1~2か月後に2回目の接種を行い、初回接種の約6か月後(2回目接種の3〜4ヶ月後)に3回目の接種を受けていただきます。

サーバリックス
サーバリックスは「16型」「18型」のHPV感染を防ぐ効果に期待できるワクチンです。
2つのHPV感染予防に有効なことから「2価ワクチン」として知られています。
ガータシル
「16型」「18型」「6型」「11型」の感染予防に有効なワクチンです。
4種類のHPVの予防効果に期待できることから「4価ワクチン」と称されています。
シルガード9
2021年2月に発売開始され、2023年4月から定期接種の対象となったワクチンです。
上記の4種に加えて「31型」「33型」「45型」「52型」「58型」のHPVに対する効果に期待でき、9種類のHPVの予防効果に期待できることから「9価ワクチン」と呼ばれています。
「6型」「11型」は子宮頸がんではなく性感染症の一つである尖圭コンジローマの原因となるウイルスです。そのため尖圭コンジローマの予防にも期待されています。尖圭コンジローマは、陰部にいぼができてはじめて気づかれることがほとんどです。
一度できてしまった大きいいぼは、液体窒素やレーザーやメスで切除するしかなく、再発のリスクも高いので感染すると治療が大変な感染症です。
子宮頸がんワクチンの
副作用について
- 倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
ただ、上記の症状が長期間続くことは滅多に起こりません。
子宮頸がんワクチンを
接種した後に関する注意点
- 接種直後(注射針を刺された直後)に激しい痛みを感じた場合は、その場で速やかにお伝えください。
- 接種後、体調に変化が生じた場合は、すぐに医師へご相談ください。
- 接種当日は激しい運動や入浴を避けてください。接種部位は清潔に保つように気を付けてください。
- 接種当日はできる限り安静にしてお過ごしください。
子宮頸がんワクチンの費用
子宮頚がんワクチンは定期接種ワクチンです。対象年齢は「小学校6年生から高校1年生相当の女子」であり、これに当てはまる方は無料で接種を受けられます。
| シルガード9 |
30,000円 |
|---|
診察料と消費税を含めた検査のお支払い額
初診再診問わず
- 1回料金【33,000円】
RSウイルス予防ワクチン『アブリスボ®』のご案内
2024年より、日本全国でRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチン「アブリスボ®」の接種が始まり、当院でも接種を行っています。
母子免疫ワクチンによる生後間もない赤ちゃんのRSウイルス感染予防の重要性から、厚生労働省の専門部会で令和8年度から定期接種を開始する具体的な検討が行われています。詳細は今後分かり次第お伝えいたします。
RSウイルスは、乳幼児の風邪の原因として最も多いウイルスの一つですが、感染した場合、生後0-2ヶ月が重症化・入院のリスクが最も高いと言われています。
RSウイルス予防ワクチンは、妊娠中のお母さんに接種することで、お母さんの体内で作られた抗体が胎盤を通して赤ちゃんに移行します。このワクチンを受けることで、生後およそ6ヶ月までに発生するRSウイルス感染症による重症下気道疾患(肺炎、細気管支炎など)から守る効果があります。
RSウイルスワクチンは、生後90日までの赤ちゃんにおける重症RSウイルス感染症による下気道疾患を約82%、生後6ヶ月まででは約69%予防する効果が示されています。
(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2216480?utm_source=chatgpt.com)
RSウイルス予防ワクチンをご妊娠中の接種推奨期間に受けていただくことで、赤ちゃんを生まれた瞬間から切れ目なくRSウイルスより守ってあげられます。
そのため、『赤ちゃんをRSウイルス感染から守る“ママからの最初のプレゼント”』とも呼ばれています。
当院かかりつけではない妊婦さんも、もちろん当院での接種が可能です。
出産後の大切なお時間を安心して過ごせるよう、お力になれましたら嬉しく思います。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)によって引き起こされる感染症で、乳幼児の風邪の原因ウイルスとして最も有名なウイルスのうちの一つです。ご家庭や保育園などで簡単に感染が広がるため、2歳までにほぼ100%の子どもがRSウイルスに感染すると言われています。
特に、生後6ヶ月以内の感染では、細気管支炎や肺炎を起こして重症化する頻度が高く、米国CDCの報告では0-2ヶ月の入院発生率は1-2歳児の約6倍と言われています。また、1歳までにRSウイルス感染症で入院した児では、そうでない児と比較して喘息の発症率が高いことも知られています。
RSウイルス感染症の症状
数日の潜伏期間(症状が出るまでの期間)の後に以下の症状がみられるようになります。
症状
- 発熱
- 鼻水
- 咳 など
乳幼児の多く(およそ70%)は、RSウイルスに感染しても数日で症状が落ち着き、自然に回復していきます。
しかし、残りの30%ほどのお子さんではその後、細気管支炎や肺炎などの下気道炎を引き起こして重症化し、無呼吸発作や急性脳症など重い症状を引き起こすことがあります。特に生後6か月未満の赤ちゃんや早産で生まれた赤ちゃん、心臓に病気を持つお子様は重症化しやすいと言われており、特に注意が必要です。
重症化すると以下の症状がみられます。
症状(重症)
- 強い咳
- ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)
- 呼吸困難により顔色が青白い
- 唇の色が青紫色になる
- 乳幼児ではミルクの飲みが悪くなる
- せき込んで嘔吐し、食事や水分が充分にとれない
RSウイルス感染症の発生数
日本では毎年およそ12~14万人の2歳未満のお子さんがRSウイルス感染症と診断され、そのうち約3万人が入院治療を受けています。重症になると集中治療室での管理や人工呼吸器が必要になる場合もあり、命に関わることもあります。生後間もないほど重症化のリスクが高いことが知られています。
RSウイルス感染症の流行期
RSウイルス感染症の全国報告数によると、RSウイルス感染症の流行のピークは6月〜9月頃で、毎年流行するタイミングが異なります。そのため、流行を把握するだけではなく、日頃からの感染予防が大切と言われています。特に赤ちゃんがまだ小さいうちは人混みを避ける、手洗いやうがいを徹底する、風邪を引いた人との接触を避ける等の対策が重要です。また、保育園や幼稚園では感染が広がりやすいと言われているため注意が必要です。
赤ちゃんのお兄ちゃん、お姉ちゃんが軽い風邪を引いたかなと思っていたら、原因がRSウイルスで、生まれたばかりの赤ちゃんに感染してしまった、重症になって入院治療が必要になってしまった、ということが毎年のように数多く起こっています。しかし、これは誰の責任でもなく、どんなに気をつけていても避けようのないことがほとんどです。
感染経路
RSウイルスは飛沫(ひまつ)感染や接触感染により感染します。
- 飛沫感染:空気中に飛び散ったウイルスを吸い込むことで感染します。
- 接触感染:ウイルスが付着したおもちゃやドアノブを触ったことにより間接的に感染します。
ご家庭での注意点
飛沫感染の予防
- 咳や鼻水などの感冒症状がみられるお子さんや大人とは、できる限り接触を避ける
- マスクをつけて、手洗い、うがい(うがいが可能なお子さんは)を徹底する



接触感染の予防
- お子さんが使っているおもちゃ、ドアノブなど、日常的に触れる場所を消毒する
- 飛沫感染と同様に手洗い、うがい(うがいが可能なお子さんは)を徹底する



RSウイルス感染による喘息発症のリスク
最近の研究では、RSウイルス感染とお子さんの喘息の発症率に関連があることが報告されています。
スウェーデンの報告では、RSウイルス感染症により入院したことがある小児では、そうでない子と比較して、3歳、7歳、13歳における喘息の発症率が高かったことが報告されています。
喘息発症率の比較
3歳の喘息発症リスク 21.8倍
7歳の喘息発症リスク 9.2倍
13歳の喘息発症リスク 6.8倍
また、米国の報告では、1歳までにRSウイルスに感染した小児(入院の有無を問わず)においても、そうでない小児と比較して、5歳の喘息発症リスクが高かったことが示されています。そのため、RSウイルスワクチンは、重症化に対する予防手段としてもとても重要ですが、それに加えて、その後の喘息発症を防げる効果も期待されています。
RSウイルス感染症の治療
RSウイルス感染症に対する確立された治療法はなく、症状をやわらげる対症療法が主な治療になります。重症の場合は、酸素投与や、集中治療室で人工呼吸器による管理が必要となることがあります。
確立された治療法がないことから、今回お話させていただいている母子免疫ワクチン「アブリスボ®」の接種による予防がとても大切です。
RSウイルス感染症の保護者の負担
お子さんのRSウイルス感染症によって、家族への精神的、身体的、経済的負担が報告されています。お子さんが感染したことのある保護者へのアンケートでは、85.4%が仕事への影響(就労への影響、仕事を休むための調整など)があったと回答しています。
RSウイルスワクチン『アブリスボ®』とは
今まで、RSウイルスの予防のためにできる手段はほとんどありませんでした。唯一の例外は、早産児・先天性心疾患・慢性肺疾患など重症化リスクの高いお子さまで、これらの方には中和抗体による予防が保険適用で行われてきました。
一方で、適応のないお子さまに対しては保険適応がなく、
- シナジス®(パリビズマブ):効果は約1か月のため流行期に毎月投与が必要
- ベイフォータス®(ニルセビマブ):1回でシーズン(約5~6か月)をカバー
いずれも自費なので薬剤費が非常に高額(数十万~100万円程度)となり、現実には選択が難しい状況でした。
そのため、これまでは手洗い・咳エチケット・人混みを避けるといった一般的な感染対策に頼らざるを得ず、とくに生後まもない時期のご家族の不安が大きかったのが実情です。
しかし、2024年にRSウイルス予防のための母子免疫ワクチン「アブリスボ®」が使用可能となりました。「アブリスボ®」は妊娠中のお母さんに接種することで、RSウイルスに対する抗体を増やして、赤ちゃんは胎盤やへその緒を通じて抗体を受け取って生まれてくるため、赤ちゃんのRSウイルス感染症に対する予防効果が期待され、お母さんの免疫力を赤ちゃんに伝えることができます。
生後6ヶ月までの予防効果が証明されており、母子免疫ワクチンと呼ばれています。
接種対象
妊娠24~36週の妊婦
(接種後14日以内に出産した場合、抗体の胎児への移行が十分でない可能性があります)
おすすめの接種時期と予防効果
妊娠30週前後
【理由】
生後6ヶ月までの「重度のRSウイルス関連下気道感染症」に対するワクチンの有効性は、妊娠28週から32週未満の接種で最も高く、88.5%の減少が認められています。
「医療機関の受診を必要とするRSウイルス関連下気道感染症」に対しても同様に、妊娠28週から32週未満の接種で最も高く、67.4%の減少がみられました。
接種方法・回数
接種方法:0.5mLを筋肉内注射
接種回数:1回
ワクチンの安全性 日本産婦人科学会の声明より
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/infection03.pdf
このワクチンが製造販売承認を受けた根拠となる国際共同第 III 相試験(MATISSE)で は、RS ウイルスを原因とする医療機関の受診に⾄った下気道疾患(MA-LRTI)の予防に対する有効性、安全性、並びに⺟親において本剤の安全性を評価しています。
この論⽂によると、接種した妊婦の局所反応としては注射部位の疼痛などはワクチン群で多かったものの、重症はなく多くは軽症から中等度でした。また全⾝反応としての疲労感や頭痛などの症状、その他の有害事象はワクチン群とプラセボ群では同様でした。さらに早産や出⽣児体重についてもワクチン群とプラセボ群では有意差はありませんでした。
有効性については、RS ウイルスを原因とする MA-LRTI は⽣後 90 ⽇で 57.1%、180 ⽇で 51.3%の減少が認められ、RSウイルスを原因とする⾼度の MA-LRTI は⽣後 90 ⽇で 81.8%、⽣後 180 ⽇で 69.4%の減少が認められました。
以上より、他ワクチンとの同時接種の可否や⽇本での接種後の⻑期的な児の影響など、現時点では不明な点もありますが、本剤は⽣まれてくるこどもに対する RS ウイルス感染症の予防に寄与することが期待されます。
料金
診察料と消費税を含めた検査のお支払い額:38,500円(税込)
※当院で妊婦健診を受けている方は妊婦健診の時に接種を行い診察料がかからないため、35,000円(税込)となります。
アブリスボ接種の予約について
当院でRSウイルス予防ワクチン『アブリスボ®』の接種を希望される方は、以下のWEB予約からご予約ください。
当院かかりつけではない妊婦さんも接種することが可能です。ご来院の際は、予防接種の記録をする必要があるため、母子手帳をご持参ください。ご不明点、疑問点などがございましたらご連絡ください。
1週間以内に発熱があった方は接種することができないためご注意ください。
当院かかりつけの方で接種希望の方はご予約不要ですので、接種希望の旨をスタッフにお伝えください。妊婦健診の時に一緒に接種することが可能です。